こんばんは、コウガです。
今日でこのお話は終わりになりますが、コウガ君達のお話は続いています。
実は後日談のようなものを在る掲示板でお話という形では無いものでやっていたりもしますがw
まぁ、こちらのブログではキィとチィが代わりを務めてくれていますのでww
これからもキィ(マイ)やチィ(アイ)のお話をお楽しみくださいませ。
…で、なんであんなに1話と2話で『拍手』の数が違うんですか~!!www(やっぱりエロですか!?)
ーででで。
少し前の記事(リンちゃん辺り)からのお話はこのお話の延長上のお話なんですよ~。
あっ1/3娘紹介にリンちゃんをまだ入れてなかった!!
タオファ(桃華)もそろそろ出てきそうですしなにやら麗奈に関してなにか騒動が起きそうな感じですよ。 <帰郷…>
アイが家に来て3日ほど経った。だいぶ家に慣れたようでのびのびとして居るように見える。
ジリリリン…ジリリリン… 家の黒電話が鳴り出した。
パタパタパタ… 小さな子特有の足音が聞こえてくる…
「はい、いちじょうです」「どちらさまですか?」
電話の音に反応したアイが受話器を取る。アイは家の電話番になっていた。
ーと、言っても掛けて来るのはもっぱら父さんでアイが来てからは毎日かけて来る…もちろん、今までは掛けて来た事など無い。
「あっお姉ちゃん!」 「うん、うまいでしょ?」 「うん」 「うん」
電話の相手は父さんではなく、マイの様だった。
「あのねー、アイ。おにいちゃんといっしょにおフロ入ってね、いっしょにねてるんだー」
「うん」 「うん」 「そう」
「…でねー、おにいちゃんのつくるごはんおいしいの!」「おにいちゃん、いろんなのつくれるのーすごいんだよー」 「うん」 「うん」
「うん、いろんな人ががいておもしろいよー」 「うん」 「うん」 「わかったー」
「おにいちゃん!お姉ちゃんがかわってーだってー」
オレはアイから受話器を受け取った…アイはオレの顔をずっと見ている…
「もしもし…マイか?」「どうした?」
「えっと…たいした事じゃないんだけど…」
「何かあったのか!」
「あっ違うよ、何もないよ」「…あのね、…生理があったから言っておこうと思って…」
「…そ、そうなんだ」「判った…」
「…えっーと、おじさんはどうなんだ?」
「もう、食事が出来る様になったよ」
「あさってからは少しづつだけどリハビリも始めるみたい」
「そっか、回復しているみたいだな」「良かった」
「…マイ、大変だろうけど頑張れよ」
「うん、頑張る…」
「じゃあ、アイに代わるか?」
「あっ…待って…」 「・・・」 「・・・」
「どうしたんだ?」
「…コウちゃん…私のこと、愛してる?」
「なっ何、言ってんだよ」
「だってー…」「さびしいよ……」
「…アイが見てるんだけど?」
「でもー」
「あっー判った!」「愛してる!オレはマイを愛してる!!」
「ありがとう、コウちゃん」「私、頑張る!」
「アイに代わるぞ」
オレはマイの返事も聞かずにアイに受話器を渡した…アイは嬉しそうにニコニコしていた。
オレは居間に引っ込んでしまったが、しばらく姉妹で話していた様だった…
・・・・・
健次さんが倒れてから三ヶ月ほど過ぎ、やっと健次さんとマイが神杜に来れる事になった。
神杜病院の車が空港から病院まで送ってくれる事になっていたので、オレとアイは病院で待っていた。
風は少し冷たかったが日差しは温かかった。アイはまだ咲いている花を見て楽しそうにしている…オレはそんなアイの姿を見ながら初冬の晴れた空を感じていた。
しばらくして、病院の入り口近くに車が止まった。ワゴンタイプの後ろの扉から父さんとマイが降りて来た。
「アイ、父さん達が着いたぞー」
「はーい」
オレとアイが車に近づいて行くと病院の人が健次さんを乗せた車椅子を降ろし始めていた。
オレはきちんと降ろし終わるのを確認してから、アイの背中を押す。アイはオレの顔を見てから健次さんの元へと駆け出した…
「お父さん!!」
「・・・・・」 「・・・」
しばらくの間、健次さんはアイの姿を見ていた…
「お父さん?」「どうしたの…」
「ここは神杜だよな…」
「うん、そうだよ『かみもり』だよ」
「…やっと、帰って来たんだな…」
「うん?」「…お父さん?」
「…どうだ『愛』、神杜は?」
「…!?」「お父さん、アイのことわかるの!!」
「ああ、判るぞ。お父さんの大事な大事な娘の『愛』だ」
「お父さん、記憶が戻ったの?」
「舞、心配かけたな」
「お父さん…」
「健次…」
「光一、…ありがとう」
「健次…」
父さんは上を向いて空を見上げていた…本当は涙を堪えていたんだと思う…
「…君は光牙くんかい?」
ビックリして思わず近づいていたオレを見て健次さんは声を掛けて来た。
「はい」
「大きくなったね」
「はい」
「愛の事を見ていてくれてありがとう」
気付くとアイはオレに抱き付いていた…オレも無意識にアイの肩を抱いていた。
「本当に戻って来たんだな…」
健次さんは青い空を見上げていた…
<家…>
「ただいまー」
「お帰り」
「あっおにいちゃん!」「もう、おきてもだいじょうぶなの?」
「ああ、もう大丈夫だよ」
「よかったー」
「お帰り」
「あっはい。今、帰りました」
「…どうだった?」
「ちかれたー」
「はい。問題無く終わりました」
「そうか…」「ゴメンな、こんな時に具合悪くなっちゃって…」
「ううん。コウちゃん、気にしないで…」
「ゴメン」
「コウちゃん、謝らないでよ…」
「…それより、本当に良くなったの?」
マイはそう言うとオレのおでこに手を当てて見る…
「うーん、だいぶ良くなったみたいだけど、まだ微熱があるんじゃない?」
「もう7度位しかないよ」
「えっーダメだよーまだちゃんと寝てなきゃ」
「ほら、早く布団に入って!」
「判ったよー」
アイとマイは北海道に行っていた。お父さん『健次さん』の49日で北海道に在るお墓に納骨をする為に…
オレと父さんも行く予定だったが、オレは数日前から風邪をひいてしまい前日になってとうとう39度の熱を出して寝込んでしまった…なんとか行こうとしたのだが、三人に怒られて仕方なく家に残る事にした。
アイもマイも本当にオレの体の心配をしてくれていた。
お父さん『健次さん』の納骨なんかよりオレの方が大事だと…
二人して「お父さんもお母さんもこの神杜に居るんだから…」-と言って…
健次さんが亡くなったのは神杜に来て一週間後の日曜日だった。
その日、マイは早くから病院に行っていて、オレはお昼を食べてから昔、マイと行った同じ道をアイと通り丘の上にある病院へと歩いて行った。
アイは静かに扉を開けて健次さんが起きているのを見るとちょっと大きめの声で「お父さーん」と言いながらベッドに走って行った。
その時、健次さんは個室に居た。父さんがしばらく落ち着くまで個室にして貰おうと言ったからだ。
健次さんはアイの姿を見るとやさしげな笑顔を見せていた…
…しばらく、ゆっくりとした時間が流れた。
健次さんは薬の為か眠っている…アイはマイと一緒に居ておとなしくしている…オレは少し離れたソファアに座っていた。
空の色が茜色に変わって行く…健次さんが目を覚ましたようだった…
「由香里…来てくれたのか…」
オレは最初、寝ぼけているのかと思った…
「もう、二人は大丈夫だ…」
「光一と光牙くんがきっと幸せにしてくれる…」
「お父さん…どうしたの?」
マイは立ち上がり健次さんの側へ行った…アイはしばらくマイを見ていたがオレの側に来た…
オレは…何と言っていいのか判らずに居た。
「おにいちゃん?」「どうしたの?」
アイはオレの手を引っ張った。
「うわっー、天使さんだー!!」
アイは大きな声で言う、その声にマイは思わずこちらを向いた。
「あれ?」「見えなくなっちゃった…」
ビックリして手を離したアイはそう言った。オレはアイの手を取る!
「あっ、見えるよ。おにいちゃん!」
「マイ!オレの手を!!」
「う、うん」
オレの手を取ったマイは思わず声に出した…
「お母さん…」
そう、オレ達の目の前に居る天使は…オレ達がイメージしている天使の姿をしているのはアイとマイの母親の『由香里さん』だった。
「えっ?あの天使さんアイのお母さんなの?」
「ああ、アイとマイのお母さんだよ…」
「お母さん、天使さんなんだー」
〔 光牙くんには私の姿が見えるのね 〕〔 愛も舞もお母さんが見えてる? 〕
「はい」
「うん」
マイは涙を流していた…
アイは嬉しそうにしている…
〔 愛も舞も大きくなったわね。お母さん嬉しいわ 〕
「お母さん…」
〔 光牙くん、舞と愛を頼む… 〕
気付くと『由香里さん』の横には『健次さん』が立って居た…いや健次さんはベッドに居る。
〔 三人とも、仲良くね 〕〔 お父さんとお母さんはこの神杜の空からみんなの事を見てるから… 〕
そう言うと二人の姿は小さな光の球となった。その二つの光りは窓のガラスを通り茜色の空へとゆっくりと昇って行った…
・・・・・
「やっぱり、おにいちゃんのお家がいちばんいいねーお姉ちゃん」
「そうね…本当に…」
二人の姉妹はオレの横で和やかに話して居た…。
<春…>
2007/06/19 (Tue) 22:21:14
オレとマイはアイを連れて思い出の場所へと来ていた。
「うわーすごーい!!いろんな色のお花がいっぱい!」
小さな丘を登ると眼下には色とりどりの花が咲いていた。
「凄い…5年前より、いろんな花が咲いてる…」
「だろ」
アイは嬉しくてお花の中を走りまわっていた。アイの背中には白くて小さな羽が付いている、もちろん本物の羽ではなく背負っているリックに羽が付いているだけなのだが花畑の中を跳ねているアイは小さな天使に見えた。
・・・・
神杜では珍しい雪の降る日。外で雪を見ていたアイが突然オレを呼んだ。
「おにいちゃん!いまそこに小さな天使さんがいたよ!!」
「えっ?本当??」
「うん!!」
オレは上着を羽織ると急いで外に出た。
「おにいちゃん、こっち!」
オレはアイに呼ばれて走った。
アイは雪の降る中、平気で走っている…オレは滑って思うように走れなかったその為、アイと変わらない…いや遅くなっていた。
気付くと商店街の辺りにまで来ていた…この辺まで来てしまうと、どの足跡が天使のモノか見当が付かなくなってしまっていた。
アイはとてもガッカリしている…
「…アイ、せっかく商店街まで来たんだから何か買って行こうな?」
「…うん」
「アイ、お腹減らない?」
「ほら、あそこで鯛焼き売ってるぞ…っえ?」
鯛焼き屋の横で美味しそうに鯛焼きを食べている女の子の後ろには小さな白い羽らしき物が動いていた。
「アイ、あの子か!」
「あっ、うん!!そう!」
オレとアイは急いで女の子の元へと駆け寄った…女の子はビックリしている。
「あ、あの、何か?」
「おねいさん、天使さん?」
「えっ…あっこれ?」
女の子はくるっと後ろを向いた。その背中には小さな羽が付いたリックが在った。
「へぇ~こんなのあるんだ~」
「…天使さんじゃないんだ……」
「ごめんね」
「ううん、こっちこそごめんなさいです」
「でも、これかわいいです…イイナー…」
「そうでしょ、私のお気に入りなの」
「ねえ、コレ何処で売ってるの?」
「お兄ちゃんからのプレゼントだから良くは判らないの…でもたぶん東京で買った物だと思います」
「そうなんだ…こっちでは売ってないのかな?」
「同じの持っている人を見た事が無いから、こっちじゃ売っていないんじゃないかと思います」
「そっかー」
「いいなー、かわいいなー」
「…ねえ、背負ってみる?」
「いいの?」
「うん、付けてみて!」
「ありがとう、おねえさん!!」
アイはそのリックを借りて背負ってみた。アイにはちょっと大きいような気もしたが文句無く可愛いかった。
「うん、可愛い!可愛い!」
「えへへ、ありがとう。おねえさん」
オレは上着のポケットに入っているものに気が付いた…それは健次さんが使っていたデジカメだった。
マイが「私、こういうの得意じゃ無いから」と言ってオレにくれた物だった。
「アイ、こっち向いて」
オレはキョトンとしているアイの写真を撮った。
「今度は後ろ向いて」
オレは調子に乗って10数枚ほど撮った。
「こんなもんかな?」
「ねえ、おにいちゃん」「おねえさんといっしょに撮ってー」
「おねえさん、アイといっしょにー」
「えっと、よければこの娘と一緒に写真に入ってもらえませんか?」
「はい。良いですよ」
「じゃあ、撮ります」
アイは見ず知らずの女の子と楽しそうに笑っていた。
・・・・
その後、父さんがこのリックと同じ物を買うのにかなり大変だったようだが、アイの中で父さんの株が飛躍的に上がったのは父さんが「愛が父さんの背中を流してくれたんだぞー」と泣いて喜んでいたので間違い無いだろう…。
「おにいちゃーん!おねいちゃーん!」
アイがお花畑の中からオレ達に手を振っている…アイはもうすぐ小等部に入学する。
あの羽リックの娘の家が近くらしく登校時に迎えに来てくれる事になっている。アイは既にこの神杜で数人の友達を作ったようだ…学園に通うのが楽しみでしょうがないらしい。
「コウちゃん…」
「なに?」
「ありがとう…」
「何が?」
マイは健次さんが亡くなってすぐに父さんに「私、働いて愛の養育費をなんとかしますので愛が高校を卒業するまでこの家に置いてください。もちろん、この家の家事も私がします!」-と嘆願して来た。
だが、父さんは「君はちゃんと高校に行くんだ」-と言う。めずらしくマイは父さんの意見に首を立てに振らずに「お父さんの預金だけではいずれ足りなくなってしまいます。ですから少しでも早く働いて一条家の負担を減らさないと」マイは引かなかった。
「マイ、健次さんはオレと父さんを信用して天に昇って行ったんだぞ。そんなにオレや父さんが信じられないのか?」
「…コウちゃん…」
「舞ちゃん、父さんは君にはこの町で友人を作って欲しいんだ…」
「オレと健次のような…いや、由香里さんと『麻奈』のようなどんな時にでも信じ合える友人をこの神杜で見つけて欲しいんだ…」
「…はい」
マイは編入試験には何の問題も無く受かり、三学期の途中から神杜学園の高等部の一年として入学した。
実際の話、学園は顔見知りばかりなのでマイはとても歓迎されていた。
オレとの同居に関しても「よかったねー舞!」と言ってくれる人が大半だったらしい。
とにかくマイは学園にも馴れて楽しそうに日々を過ごしている。
オレ的に残念なのは、あれ以降マイとHが出来ていない事位だけ…たまにマイが周りに人が居ない(アイを含む)のを確認して軽いキスをしてくれる位だが…まあ、それでも良いかなとオレは思っている。
「コウちゃん、大好きだよ!」
「アイもおにいちゃん、だいすきー!!」
いつの間にかアイがオレの足元に来て抱き付いていた。めずらしくマイもオレにもたれ掛かっていた…
これから、オレ達がどうなるかなんかは解からない。でもオレはこの姉妹と一緒に…大事なアイとマイと一緒に歩んで行こうと思う…。
It.アイ.マイ.me.story…
ーと、行った感じで家にはキィとチィが居たりしますw
キィも20歳となりチィも8歳になっています。
(年齢の差はチィを作ったのがキィの作った2年あとだからですw)
キィは最初永遠の16歳のはずだったんですけど…w
最後に最近のキィ、チィ姉妹の画像で終わらせてもらいますね!
こんばんはコウガです。
今日はお話の続きになります。
このお話は今日の2話と次の3話で終わりますので、もう少々お付き合いくださいませ。
ーで、今日はワンフェスから『ディーラー登録通知』なる物(ハガキ)が届きました。 ーという事で、今年もワンダーフェスティバルに参加いたしますので、
『ジョーク素体』に触ってみたい!!-と人はぜひいらっしゃって触ってみてくださいね!
今年は、すっぽんぽんの素体も置いておこうかしら??
どの素体にしようかな~。。。それでは、お話の続きですw <香月宅…>
「この家か…」
まだ築10年は経っていなさそうな小奇麗な家だった。
ホテルからタクシーに乗り、マイに教えて貰っていた住所とアイの指示でアッサリと家の前にまで来れた。
「ココに居ると、北海道じゃ無いみたいだな」
この辺りは、完全な住宅街で普通の家が並んで居る…確かに、土地は安いのか一軒当たりの敷地の大きさは大きいのだが…『北海道』というイメージはまったく無かった。
ふと、表札を見ると…香月健一、麗華、萌華、来夢と書かれていた・・・
「…こんな字を書くのか…」
もちろん表札にマイとアイの名は無かった。
とりあえず、オレは呼び鈴を押して見た・・・・・・返事が無い
もう一度・・・・へんじがない…。もう一度・・・・・・・・・・まったく無い。
「アイ、鍵は持ってる?」
「うん、もってるよ」
アイは鍵を出して玄関ドアを開ける。
「…ただいま」
「…お邪魔します」
なんとなく、勝手に入ったような感覚で変な感じがしたが気を取りなおして家の中に入った。
「おにいちゃん、こっち」
アイは階段の途中からオレを呼び、2階へと上がって行く。
オレも階段を上がると、アイは一番端のドアの前で待っていた。
「ココが私とお姉ちゃんが使ってるへやだよ」
アイはそう言うとドアを開けて中へと入って行った。
その部屋の天井は屋根にあたっているのか斜めになっていて、広さはせいぜい3畳も在るか無いかの大きさだった・・・
きっと本来は物置部屋なのかも知れない・・・
天井の低い方に4段ほどのタンスと上着を掛けるためのパイプのスタンド…その横には机の代りなのだろう低いテーブルと座椅子があって卓上蛍光スタンドが置いてある。
「……マイ、こんな所で勉強してるのか…」
そして、片付ける所が無いのであろう布団がきれいに畳まれて端に寄せてあった。
「……本当にアイが一人で寝るのに慣れていない訳だ…」
ホテルの部屋を代える際に最初ツインを二部屋にするつもりだったがマイが「愛は一人で寝るのに慣れていないので同じベッドで寝ますので・・・」等と言って一部屋になったのだが・・・確かに、このスペースには一組しか敷けないよな…
オレがそんな事を考えている間にアイは自分の着替えの服や下着等をテキパキと出してリックサックに詰め込んでいた。
本当に荷物が少ないのだろう、子供用のリックに粗方詰め込めてしまっていた。
「ねえ、おにいちゃん?」
「何?」
「このくまちゃん、持っていっちゃダメ?」
「えっ、このぬいぐるみ?」
「うん……」
「ああ、良いよ。この子も一緒にオレの家に行こう!」
「ありがとう!おにいちゃん!!」
「ホントにイイおにいちゃんだ事…」「よかったわね~あい」
いつの間にバカ姉『萌華』がドアの所に立っていた。
「あい~、この家出て行くんでしょ~」「私達にあいさつは無いのかしら~」
手にはよくある30cmほどのプラスチックの定規を持ってパシパシと鳴らしていた。
<萌華…>
萌華(もか)の鳴らすパシッパシッという音にアイは異常なほど脅えていた・・・
「挨拶は準備が全て終わってからあらためてするつもりだ」
「あら、そうだったの?このままコソコソと勝手に家に入ったみたいにコソコソ出て行くのかと思った」
「呼び鈴を押しても誰も出て来なかったから仕方なく入ったんだ、それにまだアイもマイもこの家の住人で鍵だって持っているんだ入ったからといって何の問題も無いはずだ」
「でも、あんたはまったくの他人。『私の家』に勝手に入って来ないで欲しいわ」
「…それは、悪かった」
「ふーん」「…舞は居ないのね」
「ああ、マイは健次さんの所に居る」
「ふーん」「…あんた、たしかコウガとか言うんだっけ?」
「ああ、一条光牙だ」
「ふ~ん…」「……舞とはもうSEXしてるの?」
「なっ、なに言ってんだよ!」「そんな事してる訳ないだろ!」
「へーっ、そうなんだー」「まだ、なんだ~」
萌華はオレの全身を値踏みするように見回した。
「ふ~ん、自分の妹に『お義兄ちゃん』なんて呼ばしてるからSEX位してるのかと思ったけど、やっぱりあの堅物じゃさせてくれないかー」「あははは・・・」
きっと、何か勘違いをしている様だったが、訂正するのも面倒なので聞き流して答えた。
「もう、良いだろ」「挨拶はあらためてさせてもらう今日はアイの身の回りの必要な物を取りに来ただけなんだ」
「アイ、もう必要な物は無いのか?」「無いのなら、もう御いとまするぞ?」
オレがそう聞くとアイは声を出さずに頷くだけだった。
・・・なぜか萌華が楽しげな表情に変わって声を掛けてきた。
「あら、もう帰っちゃうのーあたし、もっとコウガと一緒に居たいなー」
「あたし、コウガになら、舞がしてくれないような事、してあげてもイイかなーと思ってるんだけどなー」
萌華は胸元の開いたセーラー服の中身を強調させる様に体をよじる。・・・舞と正反対の性格と体格をしているようだ。
などと思いつつも、オレの視線はしばらく萌華の胸に行ってしまっていたが、何とか視線を外した。
「あら、もっと見ててもイイのにー」「舞のお子様サイズじゃツマンナイでしょー」
そう言いながら今度は短いスカートをまくり定規を自分自身に当てていた。
「胸だけじゃないのよ。あたしのココ凄く良いって、みんな言ってるわ…舞とするよりずっと気持ちイイよ」「ねえ、あたしの部屋でSEXしようよ」
萌華はオレの腕を取ると肘が胸に当たるように引っ張っていた。
「ほらー、早く~あたしの部屋に行こう!」
「ダメー!!」
今まで、脅えていたアイが立ち上がって大きな声で言った。
「おにいちゃんは、アイのおにいちゃんだからダメー!」
アイは、萌華をオレから引き離そうとしていた。
「うるさいわね!邪魔よ!!」
少しの間、ビックリしていた萌華だったがアイに持っていた定規を振り降ろしていた。
バシッ!!!・・・
「やっぱ結構、痛いもんだなー」
定規はオレの手の中でイイ音を出していた。
オレはその定規を握り、萌華の手から奪うとパキッと2つに折り、萌華に返した。
「半分になっちまったけど、定規としてならまだ使えるだろ」
「あと、折角のお誘いだけど遠慮しておくよ。オレにはアイとマイっていう大事な女が居るからな」
「-と言う訳だから、金輪際マイになにかしやがったら、女だろうが何だろうがその顔、他人に見せられない位にぶん殴りに来るから…そのつもりで…な」
オレは転がっている、リックとくまを持って部屋を出た。
アイは何も言わずにオレの後をパタパタと付いて来るのだった。
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・・・・
「うわーやべー」「なんて捨てセリフ言っちまったんだー…」
「…父さんになに言われるかわかんねー」
オレは近くに在った公園のベンチに座って大きな独り言を言っていた…
<公園…>
「……まあ、しかたないかー…」
(・・・あれ?アイは?)
「…!?」
「アイ!!」
オレは思わず大きな声を出して立ち上がると
「なに?おにいちゃん」
アイはきょとんとした顔をしてオレのすぐ横にいた。
「…よかったーちゃんと居たー」
「うん、アイはおにいちゃんと居るよ」
「…アイはえらい!」「オレよりえらい!!」
オレがそう言うと照れてモジモジしていたが…
「そんなことないよ、おにいちゃんはかっこいいよ!アイ、おにいちゃん大好き!!」
ーと言って、抱き付いてすりすりし始めた・・・
・・・
この公園には公衆電話が在ったので、父さんに連絡を付ける事にした。
もう、この時間ならとっくに会社に着いているはず…
父さんはいつも会社に携帯電話を置いて退社しているのだそれはなぜかと言うと、父さんが電話ごときに縛られるのが嫌いという事もあるが、『神杜に住んでいる』のが理由なのだ。
神杜町では、携帯電話や無線といった物の持ち込みは禁止されて、もし持ち込みした場合はその機器の破壊&10万以下の罰金となっている。
町に入る際にゲートを通るのだが、電源を切っていようが判るらしい。その際は出町するまで町(国)に預られてしまうのだ。だから父さんは会社に携帯電話を置いて来るのが習慣と成っていた。
だから、神杜の住人は未だにテレカを持ち歩いているのだ、もちろんオレも持っている1000円を5枚も!!オレはテレカを入れて父さんの携帯の番号を押した。
「もしもし、父さん?」
「おっ光牙か、今どこだ?」
「香月家の近くの公園」
「そうか、愛ちゃんの必要な物は準備出来たのか?」
「それは、終わった」
「そうか。…そういえば、愛ちゃんに友達とかお別れを言いたい人が居ないのか聞いたか?」
「あっ…聞いてない」
「明日は忙しくて時間が取れないだろうから今日の内に済ましといた方が良いな。香月の方には時間を取って挨拶をするから良いがな…」
「それなんだけど…」[……」
「…どれだ?」
オレは父さんに事の経緯を伝えた…
「……」「器物破損と恐喝か…?」
「………まあ、良いんじゃないか」
「へっ?」
「その位、言って置いた方が舞ちゃんの為には良いかもしれないな」
「お前が萌華ちゃんに言ったって大した問題は無い。もちろん実際に手をあげたとか言うのなら別だが…」
「ない、それは無い!!」
「それなら、大丈夫だろ…」
「でも、もう少しもの考えて行動しろ!…まあ、守りたいという気持ちは判るけどな」
「…父さん」
「そうそう、舞ちゃんはちゃんと予定どうりの時間に電話をくれたぞ!」
「…あっそう、ーでなんだって?」
「…まあ、父さんも朝に会って来たから判ってはいたんだけどな…」
「正式に記憶の後退と右半身の麻痺という診断が出たらしい」
「…そう…じゃあ、アイは病院には連れて行かない方が良いのかな?」
「うーん、難しいな。『アイ』と言う存在を今のアイツに認識させる事は難しいだろう…」
「逢わせるのなら昨日のように『アイ』ではなく『マイ』としてなら問題無いと思うが…お前、愛ちゃんを『マイ』として健次に逢わせられるか?それが出来るなら逢わせてあげろ、出来ないなら止めておけ」
「……判った」
「じゃあな」
父さんは難しい事をさらっと言って電話を切った。
<涙…>
オレは電話を切りBOXから出た。
「そうだよなー、友達とも別れる事に成るんだよなー」
「しかも、こんなに突然…。…ホント、オレって考えが足りないよな…」
オレは独り言を言いつつアイの待つベンチに戻って行った。
「アイ…」
「なに?おにいちゃん??」
「明日にはこの町を出る事になるんだけど、お別れを言って置きたい人…お友達とかいたら今日中に言って置いて欲しいんだ」「何人いても良いぞ、オレも一緒に回って挨拶して来よう!」
「……いないからいいよ」
「だれにもお別れのあいさつしなくても…」
「えっ…そんなこと無いだろ?一人か二人くらいは…」
「ううん、居ないよ」「私、友達いないもん。幼稚園もきらい…」
「アイ…」
オレが思っていたより、アイの居た環境は酷いものだったのかも知れない…アイは『オレ』つまり『今の状況から救い出してくれる人』を本当に一日でも早く現れる事を祈っていたのだろう…
「アイ、ごめんな。変な事、聞いちゃって…」
「…挨拶する手間が無くなって楽になったな。オレ本当は苦手なんだ、助かったー」
アイは今にも泣きそうな顔をしながらもオレの言葉になんとか笑みをつける。
「神杜は良い所だぞ、アイが今まで見た事の無い人達が…いろんな種族の人達が居るんだ。」
「でも、変な差別なんかないし、みんながその人、その人を尊重して暮らしている町なんだ…だから、きっとアイにも凄く大切な友達だっていっぱい出来るさ」
「…もちろん、オレもいる。アイの側に居る。だから…」
「…おにいちゃん。アイ、アイね…」
アイは唇を噛み締めながら、泣いていた。声も出さずに…
この涙は、どういう意味の涙なのかオレにはきっと判らないだろう…ただオレに出来ることはアイが泣きやすい様に抱きしめることくらいだった。
・・・・・・
しばらくして、泣き止んだアイは目元を拭うとオレに笑い掛けてくれた。
「えへへへ…」
精一杯の笑顔…まだ泣き足りないのかも知れない、それでもアイはオレに微笑みを向ける。
「アイ、それじゃあ。何かしたいことは無い?行ってみたい場所があるなら行こう!!」
「……う~ん」
アイはオレの問いに真剣に考え込んでいる。
「今日中に帰って来れそうな所なら大丈夫だよ、何処か無いのかな?」
「…おにいちゃん、アイね」「アイ、お父さんの所に行きたいの」
「……ダメかな」
オレの顔を見てアイはそう言い付け足した。
「……ダメじゃないよ」「ただ、アイに頼みがある…」
<頼み…>
オレとアイは札幌中央病院に来ていた。
そして病室を覗くとマイが昨日と同じように健次さんの傍らに座っていた。
オレは静かにアイの背中を押して病室の中へと入れる。オレ達の気配に気付いたのかマイがこちらを向いた。オレが何も言わずに頷くとマイはアイを迎えて健次さんの元へと連れて行った。
「お父さん?」
マイが呼ぶと健次さんは静かに目を開けた。
「んっ…舞、今日も来てくれたのか…」
健次さんは二人の姿を…いや、アイの姿を見てそう言った。
その声…言葉はなぜか昨日よりもたどたどしく『なんとか言葉にしている』といった感じだった。
「お父さん、ぐあいどう?」
「昨日よりはずっと良いよ…」
「よかったー」
アイはオレの頼みどうりに自分の事を『マイ』と言われても素直に会話をしてくれていた。
……アイは凄く頭が良くて素直な子だ。オレが『お父さん』は昨日から10年位前までの記憶が無くなってしまっているみたいなんだ…と言うとアイは
「10年?…じゃあ…お父さんアイのこと、ぜんぶわすれちゃっているんだね…」
「でも、きっと一時的なものだと思うよ」「少し時間が経てばきっとアイの事、思い出してくれるさ」
「…うん。そうだよね」
アイは可哀想なくらいに落ち込んでしまっている。確かに自分の親が自分の事を忘れてしまうなんて…
母親の居ないアイにとって、大好きなお父さんが自分の事を判らないなんて…
オレはやり切れない気持ちを切り替えて言葉を続けた…
「それでね、10年前だとマイがちょうどアイ位の年だったんだ。だから『お父さん』はアイの事を小さい頃のマイだと思ってしまったみたいなんだ」
「そうなの?」
「うん、5・6歳の頃はマイも髪を短くしてて今のアイと同じくらいだったし、なにしろ姉妹なんだからやっぱり似てるよな」
「そうなのかなー」
似てると言われたアイは少し嬉しそうな表情を見せてくれた。
とにかくアイは5歳とは思えないくらいに的確に今の『お父さん』の状態を解かってくれた。
そして、今の『光牙』と『舞』の立場もちゃんと解かってくれたのだ。
・・・・・・
「舞、そういえば光牙くんは一緒じゃないのかい?」
「えっ……と…」
オレの事を聞かれたアイは少し戸惑ってこちらの方を見たりしていたのだが、マイが声を出そうとした時には答え出していた。
「…コウちゃんならさっきまで私といっしょにいたよ」
「それで、モカちゃんの家にいっしょに行ったの!」
「そしたら、モカちゃんが私のことじょうぎで叩こうとしたの、でもコウちゃんがまもってくれたんだよ!」
「コウシテうけとめて、かんたんにパキッって折っちゃたんだーすごかったんだからー」
アイはアクションまで付けて先ほどあった出来事を話していた…もうこの子はいろんな意味で役者になれるんじゃないかと思えるくらいの凄い演技!?だった。
マイはそんなアイの姿を見て微笑んでいた。オレもつられて笑っていた。
・・・・
あの後、しばらくして健次さんに「今日は早く戻って良いぞ、暗くなる前に帰りなさい」と言われたらしくマイは看護婦さんに挨拶すると健次さんに「じゃあ、今日は帰ります」と言って病室を出てきた。
そして…
「おにいちゃん、おまたせー」
「コウちゃん、ごくろうさまでした」
ーとオレの顔を見て二人の姉妹は微笑んだ。
<大好き…>
オレ達3人は、ホテルに戻る途中で夕食を採った。そこでもアイの熱弁が炸裂していた…。
・・・・
ホテルに戻り、マイにお茶を入れて貰い一息付いて少しの間、ゆったりとした時を過ごしたのちマイとアイがお風呂に入ると言うので今日はちゃんと入るのを確認してからオレは大浴場に向かった。
今日は昨日よりも更にゆっくりと入って…少しのぼせてしまった。
部屋に戻って見ると、アイとマイはとっくに風呂から上がっていた…というか、アイはもうベッドですやすやと寝息を立てていた。
「あれ、アイもう寝ちゃったんだ」
「うん、疲れたんじゃないのかな」「今日一日で一ヶ月分位はおしゃべりしたんじゃないのかしら」
「いつもは…」「あの家じゃあんなに楽しそうにおしゃべりなんて出来なかったから…」
「…でも、もう本当に大丈夫みたい」
「何が?」
「愛のこと」「本当の事を言うと昨日はまだ少し心配だったの」「愛がコウちゃんの事を本当に信用しているかが…」
「…でも、今はもうぜんぜん心配してない」「コウちゃんはもう愛のお兄ちゃんになれたみたいだから」
「??…なんで?昨日と変わんなくない??」
「…コウちゃん、本当に気付いてないのー?」
「何を?」
「もう!」「あの子、コウちゃんに自分のこと『アイ』って言うようになったじゃない」
「えっ、昨日も言ってなかったっけ?」
「言ってないよー」「昨日は自分のこと『私』って言ってたはずだよ」
「…あっ、そういえば」
「この子って私やお父さんと居る時には自分の事を『アイ』って言うのよ」「…でも他の人が居る時には『私』って言うの…」
「…でも、もう『アイ』の中ではコウちゃんは他人じゃない…本当のお兄ちゃんになったみたい」
「…そ、そうなんだ…よかった」「そうなら、マイと離れていてもアイの悲しそうな顔をあまり見ないで済むのかな…」
「うん、きっと…」「…『アイ』が羨ましい」「これからはコウちゃんが護ってくれるんだから…」
「…マイ?」
「…私もコウちゃんと一緒に居たいよ」「コウちゃんとずっと一緒に…」
「…マイ」
「あっ、うそ」「ごめんなさい…」
マイはそう言いながら、ひとすじの涙を流した。
「あれ、なんで涙が出て来るの?」
マイは流れて来る涙を手で拭う…
「なんで、なんで止まらないの…」
オレは大きな間違いをしていた。小さな『アイ』の事を気にするあまり、『マイ』を強い人間だと思い込んでしまっいた。
本当の『マイ』はオレより一つ小さい女の子。いつもオレの後ろを付いて来た少しドジでお花が好きな女の子…そう、オレの大事な女の子なんだ。
「マイ…」
オレはマイの涙をやさしく拭うとキスをした。
「んっ…」「………」「……もう、コウちゃんって私が泣いてる時にばっかりキスするんだから」
「ばっかりってまだ2回目だろ」
マイはいつもの笑みを見せながら、
「でも、今回はやさしいキスだったよ」「コウちゃん…大好き」
マイはオレの頬を両手でやさしく触れると、自分から顔を近づけてキスをした。
<繋がり…>
「んっ…んっぴちゃ」「…ぴちゃ」「はあ、はあ……」「えへっ、私からキスしちゃった」
マイからのキスはかなり激しいキスでオレとマイは舌を絡めていた。
「コウちゃん…」「私、本当は怖いの『あの家』に一人で戻るのが…」
「だからコウちゃん、私を護って…」「コウちゃんを私に刻み付けて欲しいの…」
そう言うとマイは自分の服のボタンを外していった。
「コウちゃん、私を抱いて…お願い」
「マイ…良いのか?」
「うん私、初めての人はコウちゃんが良いってずっと思っていたんだよ」
「そうか…でも、ココじゃアイが居るから、何処か…」
「きっと大丈夫だよ、この子いつも寝るまでは大変だけど一度、寝ちゃうと朝まで起きないもの」
「じゃあ…良いんだな。ココで…」
「うん…やさしくして…」
「ああ…」
オレはそう言うとマイをベッドに倒すとそのままキスをした。さっきのマイのキスに負けない位に熱いキスを…
「んっ…ぴちゃ」「ぴちゃぴちゃ…」
オレとマイは大胆になって激しく舌を絡め合いお互いの唾液を啜った。そしてオレは右手でマイの可愛い胸を触ってみた。
凄く柔らかかった。マイの乳房はオレの手の内に収まる位の小ささだった。そして乳首もマイにお似合いのとても可愛いサイズ…でも感じているのか先端は凄く硬く尖っていた。
オレはキスをしながら先端をつかむとマイはキスしながら思わず「ひゃん!」と声を出した。
「ダメ…コウちゃん、そこをそんな風にいじめないで…」
「ゴメン、痛かった?」
「ううん、痛くは無かったけど…もっとやさしくして…お願い」
「判った」
オレは乳首を触らないようにして両手で胸をやさしく揉み始めた…
「んっ…んっ…」「…コウちゃん、少しなら触ってもいいんだよ」
そう言われたオレは指先でマイの乳首を触って転がす。
「あん!」
「痛かったか?」
「ううん、違うよ」「もっと触って…」
オレはマイの左の胸に口を付けた、そして舌で硬くなっている乳首を舐めて転がす…
「あん…コウちゃん…気持ちいい…」
しばらく舐めているとマイの乳首は大きくなって来ていた。オレは乳首を吸って引っ張っては放す。
「うんっ…あん!」
マイは嫌がっていないようだ。オレは右の乳首も舐めて啜った。左の乳首はもう手でつまんでもOKらしくマイは「気持ちいいよ~」と言っている。
空いた右手でオレはマイの大事な所を触ってみた。
パンティーの上からそっと撫でるとさわさわした感触の後に小さな突起にあたった。
「あっ…そこは…」
「ダメ?」
「…ダメじゃないよ、やさしく触って…」
オレは出来るだけやさしく触ってみた。その突起も少し大きくなってきた。更に触っているとその下の方が濡れて来てパンティーに丸いシミが出来た。
「マイ…もしかして濡れてきた?」
「バカ!そんな事、聞かないでよー」
「あははは、可愛いぞマイ!」
オレは怒っている顔のマイにキスをした。今度は頬にすごく可愛いキスを…
「じゃあマイ、パンツ取るぞ」
「ちょっと待って、もう…コウちゃんも服脱いだら?」
マイは上着とスカートを脱いでベッドの横に簡単に畳んで置いた。オレは男らしく全て脱いだ。
「…コウちゃんって、結構立派?」
「…うーん、判らん。まあ普通だろ」
「そ、そうなんだー…」
まじまじと見るマイの視線に少しは恥ずかしかったが、それでもオレの一物は萎えるどころか更に硬くなっていた。
「…ねえ、コウちゃん」「男の人って口でして貰うと嬉しいって本に書いて在ったけど本当?」
「…ああ、それは本当だな」
「そうなんだー、じゃあコウちゃんも口でして貰ったら嬉しい?」
「…ああ、マイが嫌じゃなければ…」
「そうなんだー嬉しいんだー」
オレはなんとなくこっ恥ずかしくなり横を向いてしまった。それを見たマイは少し笑うとオレの一物を手で触り擦ると自分の口の中へと入れて行った。
「うんっ…くちゅ、ぴちゃ…」
しかしマイの小さな口にはあまり入れられないらしく半分入るかどうかがやっと位だった。マイも入りきっていないのが判ったのだろう…
「ごめんなさい。…これ以上は無理みたい」
そう言って今度は亀頭を咥えると周りを舌でなぞって更に右手で根元を擦ってくれた。
「マイ…もういいよ」
「…ゴメンね。気持ち良く無かったでしょ」
「違う…続けられたら出ちゃいそうだったから」
「そうなの?」
「…マイにして貰っているだけで出ちゃいそうなんだよ」
「…えへへ、なんか嬉しいな」「私、口で出されても良いよ?」
「・・・・・」「…オレが嫌だ!」「ちゃんとマイとして出したい!!」
「…コウちゃんのH!」
「ってココまでやって何いうかなー」
「あはっ、イイよ。コウちゃん、して…」
マイは自らベッドに仰向けに横たわり手を広げて俺を招いた。
「コウちゃん、きて…」
「…ここでいいのか?」
「もっと下だよ…あっそこ…」
くちゅ…オレの一物はマイの凄くやわらかい部分に当たったそして中へと入ろうとした。
「あっ…。ダメ、もっとゆっくり…」「んっ…んんっ…」
オレはゆっくりと腰を押し出して行った…あれ?
同じ力で押していたのだが亀頭が入ったあたりで止まってしまう。
「…コウちゃん、お願いもっとゆっくり…」
「ああ、判った」
オレは自分か出来る最大の遅さそれでいて力強く進んで行った。
そして、突然抵抗が無くなり『ずるっ』とオレの一物はマイの中へと入っていった。
マイは痛そうな苦しそうな顔をしていたが、声は出さなかった。
「マイ、大丈夫か」「今、抜くからな」
オレの一物は拍子でマイの一番奥まで届いてしまっているようだった。
「まって、このまま。このままでいいの。抜かないで、お願い」
そう言うマイの呼吸は乱れて苦悶の表情は変わらない。
「でもマイ…」
「コウちゃん、いいんだよ。私、今凄く幸せなんだから」
「大好きなコウちゃんとひとつになれたんだもん。…大好きだよ、コウちゃん」
そう言ってマイは手を伸ばす…オレは下半身を動かさないようにしてマイにキスをした。
そのキスは長くにも短くにも感じられた…それでもオレの一物はマイの中で最大の硬度を保っていた。
「コウちゃん、動いてもいいよ。もう大丈夫だから」
「本当か?」
「うん、…でもやさしくしてね」
オレはなるべくゆっくりと動いた。マイの言葉は本当のようでさほど辛そうな顔では無かった。
少しずつ動かしていたはずが、マイの中の感触に気付くと大きく動かしてしまっていた。
「マイ…大丈夫か?」
「うん、大丈夫。そんなに痛くないよ」
「そんなに痛くないか…そんなにすぐ気持ち良くなんてなんないよなー」
「コウちゃんは気持ち良くない?」
「いや、気持ち良いんだけど…」
「だけど?」
「…もっと動かしたい…かな?」
「私なら、大丈夫だよ。コウちゃんに気持ち良くなって欲しい…」
「コウちゃんに私でイって欲しい…」「だからコウちゃん、好きなように動いて良いよ」「大丈夫、もう痛くないから」
実際の話、オレももうすぐにでもイキそうだった。あともう少し激しくすれば…
「あっ…あのね、中には出さないでね」
「ああ、判った」
オレはマイの為にも少しでも早くイこうと思って激しくストロークをした。
凄く気持ちよかった。マイの顔をちらっと見たが思っていたより辛そうな表情では無かった。
逆に恍惚として少し妖艶な感じまでする。
「あっ…あっ…んっ…コウちゃん…」
オレは更にスピードを上げた…もう限界だと思ってマイの中から抜こうと思ったのだか…体が言うことを聞かなかった…オレはマイの一番奥でイってしまっていた。オレはマイの中に入ったまま出し続けた…。
「あっ…コウちゃんのが私の中で出てる…」
「もう、中には出さないでって言ったのにー」
「ゴメン、あんまり気持ち良くて…抜けなかったゴメン!」
「気持ち良かったんだ…それならしょうが無いかなー」
「怒ってないの?」
「怒ってないよ。本当は嬉しい」「コウちゃんと本当にひとつになれた気がするから…」
「コウちゃんのおかげで私、頑張れそうだよ。お父さんの看病も『あの家』のことも…」
「…マイ。マイはやっぱり強くなった…でもオレの大好きなマイのままだ」
「マイ、好きだよ」
「…コウちゃん」
「…あれ?そういえば私、コウちゃんに『好き』って言われるの初めてかも!」
「そ、そうか?」
「そうだよー、もっと言ってー」
「いやだ」
「えっー」「言ってよー」
「ダメ」
オレは毛布を頭から被って横を向いた。
マイはオレの背中に自分の体を重ねてきた。
「…コウちゃん、私いつもならあと2,3日で生理が在るはずなの。なったら連絡するから…」
「…でも、次する時はちゃんと抜いてくれなきゃダメだぞー」
「マイ…」
オレが体の向きを変えてマイの顔を見つめたその時
「おねいちゃんだけずるいー」
寝ていたはずのアイがベッドの横に立っていたのだった。
<幸せ…>
「おねいちゃんだけ、おにいちゃんといっしょにねてずるいー」
「アイもおにいちゃんとねうー」
アイはゴソゴソとマイの上を乗り越えてオレとマイの間に入るとオレにくっ付き数回すりすりしたかと思うとすやすやと寝てしまっていた。
オレとマイはお互いの顔を見て笑うしかなかった…。
「なあマイ…してる所、見られちゃったかな?」
オレはアイを起こさないよう小さな声で聞いた。
「うーん、どうだろう?たぶん見られて無いと思うけど?」
「なら良いけどなー」
「…でこの状況どうしたらいいんだ?」
「とりあえず、コウちゃん服着たら?」
「そ・そうだな」
「それで、愛と一緒にあっちのベッドに寝て欲しいんだけどなー」
「なんであっちのベッドなんだ?」
「私はお風呂に入らして貰おうと思っているんだけど…」
「入れば?」
「・・・」「……ついでにこのベッドのシーツを洗いたいんだけど…」
「あっ…判った」
オレはアイを起こさぬように抱き上げてアイの寝ていたベッドに寝かせた。そして脱い散らかしていた服を集めて身に着けていた。
マイはオレ達が寝ていたベッドのシーツを外している…小さなスタンドの赤い灯りに浮き上がるマイの姿は少しエロかった。
そんなオレの視線に気が付いたのかマイは剥がしたシーツを体に巻き付けた。
「もう、こんな所を見ないでよー」
小さな声で言うとオレに近づくと「バカ」って言いながらキスをしてお風呂場に消えていった。
オレはしばらくの間、立ち過ごしていた…
「本当にマイとしちゃったんだなー」
・・・・・・・・
朝になって起きたのはアイの声でだった。
「うみゅーん…あれ?」「おにいちゃんとねてる??」
「おにいちゃんだー!!」
すりすり・・・朝からアイのすりすり攻撃でオレは完全に起こされた。
マイはもうすでに起きておりシーツを日光の当たる場所へと移動していた。そして少しテレた顔で言う…
「おはよう、コウちゃん。愛。」
「おはよう…マイ」
「おねいちゃん、おはようー!」「おにいちゃんもー!!」
アイはそう言うと更にすりすりしてきた。オレとマイは笑い合っていた。
すごく幸せな気がしていた…オレはこの姉妹を大切にしていきたいと心から思っていた。
<不幸…>
マイはオレ達が起きる前、すでに父さんと連絡を取っていた。
オレの予想どうりに朝の内にホテルに来るのは無理らしく病院で待ち合わせる事になった。
父さんを待つ間、アイはオレの横を離れなかった。アイ曰く「ひとりじゃ、おにいちゃんがかわいそう」との事だった。
父さんが来たのはちょうど12時頃だった。父さんはアイを連れて病室へと入って行った。
そして、30分ほどで出てきた…その後、マイを含めた4人でアイの通っていた幼稚園へ挨拶に回ってから香月家へと向かった。
昨日は入らなかったリビングへと通された。大きくて立派なリビングでオレ達4人と健一さんとババアと糞ガキ(来夢)が対面して座れる位の…あと、もう一人座れる位のソファの在るリビングだった。
会話の流れは父さんが言った内容に対して、健一さんが「判りました」もしくは「お願いします」と言うのとアイ・マイの「はい」と言う言葉だけでオレのセリフは無かった。
話も終盤となって父さんがあらためて「それでは、愛ちゃんを家でお預かり致します」と言い頭を下げていた所にバカ姉(萌華)が姿を見せた。
「なんだ、まだ居たんだー。もう居ないと思って降りて来たんだけど…まっいいか」
「あたし、出掛けて来るからママお金頂戴」
「もう萌華ちゃんたら…いくら欲しいの?」
「うーんと、とりあえず1万あればイイ」
「はい、はい。一万ね」「あまり。無駄遣いはしないのよ」
「はーい」
萌華は貰った一万円をピラピラさせ笑いながらアイに話し掛ける。
「あいー、じゃあねーバイバイ。コウガの家まで不幸にしないようにねー」
「なっ」
オレは思わず立ち上がりかけたが父さんに止められてしまった。
「・・・・」
「…モカお姉ちゃん」「アイ、不幸になんかならないよ」
「おにいちゃんといっしょに幸せになるよ」
「アイのせいでお母さん死んじゃって、お父さんやお姉ちゃんにめいわくかけちゃてたけど…おにいちゃんといっしょならアイ、幸せになれると思う」
「…だから、ばいばいモカお姉ちゃん」
「ばっばかじゃないの!そんな奴と居たって…」「もう、あたし行く!」
萌華はそう言って家を出て行った。アイは満足そうな顔をしていた。
玄関にまで出て来たのは、マイと健一さんだけだった。
「それでは、舞ちゃんを『本当に』お願いします」
「はい。判りました」
「マイ…なにかあったらすぐに連絡しろよ」「すぐにだぞ!」
「うん、判ったよ。コウちゃん」
「愛、コウちゃんを困らせちゃダメだぞ」
「うん、わかってるよ。アイ良い子にしてる!」
「アイは大丈夫だよなー」
「うん!!おにいちゃん!」
「それじゃあ、愛を宜しくお願いします、光一叔父様。…コウちゃん」
「大丈夫、光牙が命掛けで愛ちゃんを守るってさ」
「えっオレの命掛けるの?」
「男ならそうだろ」
「…だって、だからマイ安心しろ」「…あと、待ってるからな」
「うん」
「じゃあな、マイ」
「うん」
「お姉ちゃん、ばいばい」
「うん…」
オレ達3人は待たせていたタクシーに乗り込んだ、マイは窓から覗き込んでいる…車が動き出すとアイが手を振った。それに答えてマイは小さく手を振っていた。
<神杜…>
オレ達が神杜(かみもり)に着いたのは、夕方遅くだった。今日、携帯電話を持っている父さんは駅のゲートを通る前にコインロッカーに携帯電話を入れていた。
コインロッカーと言っても、よくあるお金を入れて鍵を抜くという物では無く、入れ口は一箇所で入れてお金を入れるとカードが出て来る仕組みになっている。一箇所で大きさにもよるが2千個から5千個も受け付けるらしい。父さんは一番小さいのに入れてカードを引き抜くとすたすたとゲートを通って行った。
このゲートも普通の駅の改札と違い、神杜の住人等の登録している人は素直に通れるが登録していない人が通ると反応して、センターで審査を受けてからで無いと入れない。聞いた話では審査に受からずに入れない人もいるらしい。オレとアイは二人でゲートを通った…オレはアイがゲートに反応するものと思っていたので何も起こらず拍子抜けしていた。
思わず、戻ってゲートの下に止まって見たが…やはりなにも起きない(アイの驚く姿を見たかったのだが…)仕方なくオレは近くに居る警備員さんに声を掛けた。
「すみません、この子なんですけどこれから住民登録をしようと思っている子なんですけど…もしかして、ゲート故障してませんか?」
「えっ?…」「・・・・」「そんな事は無いようですが…?」
「それでは、恐れ入りますがセンターの方までいらっしゃって頂けますか?」
「はい、判りました」
オレとアイは警備員さんに付いてセンターの中へと入って行った。そこで、警備員さんはセンターの人に説明してくれてセンターの人がこちらに来た。
「初めまして、このお嬢さんがこれから神杜に住まわれるのですね」
オレ達の前に来たのはエルフ属の女性だった。アイは目をまんまるくしていた。
「はい。家で一緒に住む事に成ります」
「はい。判りました」
「それでは、こちらのプレートの上に御二人でお立ち下さい」
オレとアイは二人でそのプレートの上に立つと一瞬光に包まれた…
「一条光牙様と香月愛様ですね」「愛様は5年ぶりの神杜になりますね」
「ようこそ神杜に…いえ、お帰りなさい…かな?」
「お姉さん、アイのことわかるの??」
「はい。この神杜でお生まれになった方はこちらで記憶させて頂いています」
「-ですので、愛様の登録は不要となります」「光牙様と同じ住所に変更させて頂きます」
「お、お願いします」
「・・・」「…はい。変更致しました」
「ありがとう御座いました」
「ありがとう!きれいなえるふのお姉さん!!」
「うふふ、どう致しまして」「あのね、この神杜はお姉さんの大好きな町なの」
「だから、愛ちゃんにも好きになって貰えたら嬉しいな」
「うん、きっと好きになる!」
「そう、良かった」「愛ちゃん、お兄さんと仲良くね」
そう言って微笑むとオレに一礼して戻っていった。
・・・・・
家に着くと父さんは早速、香月の家に電話をしていた。
たぶん最初は健一さんが出たのであろう…しばらくしてマイに代わった様だそして父さんはアイを呼んだ。
「お姉ちゃん?」「うん」「うん」
「わかったー」「うん」
「あのねー、こっちに来てすっごくきれいなえるふのお姉さんにあったよー」「うん」
「目とね、かみの毛の色がむらさきだったのーで、すごくさらさらできれいで長かったのー」
「うん、お耳がとんがってたー!」「すごくやさしくて」「うん」「うん」
「おじちゃん、お姉ちゃんがかわってってー」
父さんはアイから受話器を受け取り話し出す。アイはオレの元に戻って来てくっ付く。
「じゃあ、何時でも連絡して来るんだよ、良いね」「それじゃあ」
父さんは受話器を置いた。
「おにいちゃん、お姉ちゃんとお話しなくてよかったの?」
「ああ、良いんだ。別に話すこと無いから…」
「そうなんだー」
オレは呼ばれなくてホッとしていた。今、マイに何を話して良いかまったく考えられなかったから…。
「じゃあ、今日はもう風呂入って寝よう。父さん疲れたよ」
「じゃあ今からすぐ風呂沸かすから」
「ああ、頼む」
父さんはそう言うと冷蔵庫から缶ビールを取り出して…
「愛ちゃんもなんか飲むかい?」「えっーと、オレンジとりんごのジュースならあるな」
「うんと…、…レストランでジュースのんだからアイはいいです」
「そう?遠慮しなくても良いんだよ?」
「うん、してない。だいじょうぶ」
「そう、判った」「…じゃあ、おじちゃんと一緒にお風呂に入ろうか?」
「アイ、おにいちゃんと入るから」
「えっー、おじちゃんとじゃだめ?」
「だめー、おにいちゃんがイイ!」
・・・・
「父さん、洗い終わったからもうすぐ入れるよ…って何?どうしたの??」
「うるせい」
訳の判らないオレといじけている父さんを見てアイは微笑んでいた。
新しいブログになり、前のブログから続いているお話(私ではないコウガとキィ、チィのお話)を始めるに
元になっているお話をうp致しますw
このお話では、登場人物がコウガ、マイ、アイになっておりますが、
家の1/3ドールのキィやチィはこのお話のマイとアイが元になっていてこのマイ、アイのイメージに添って
私が作った娘がキィとチィになるのです。
…なので、私のHNをコウガにしたのは、失敗でしたね~wwwww
ちなみにこの間の記事(チィのお花見と昨日の麗奈の話)はこのお話の延長上のお話になります。
少々長いお話なのですが、宜しくお付き合いください。 =It.アイ.マイ.me.story… =
<プロローグ>
オレは国立神杜学園高等部二年、一条光牙17歳。
今、オレは血の繋がらない姉妹と一緒に暮らしている。
この町では差ほど珍しい事では無いのかも知れないが、オレにとってはこの町のどんな非日常よりも大事(おおごと)だった。
姉の名は香月舞(こうつき まい)16歳、オレと同じ国立神杜(こくりつ かみもり)学園高等部に通う後輩、一年生だ。
妹の名は香月愛(こうつき あい)6歳、春には国立神杜学園小等部のピカピカの一年生に!!(古いな)
この国立神杜学園は小等部から大学院、更に病院や警察(検察)までも敷地内に要する、学園なのだ。
・・・そして、この学園いやこの町は一種特殊な存在となっている、この町にはオレ達人間(ヒューマン)以外にエルフ、ドワーフ、マーフォークといった種族が共存しているのだ。
この町にはいろんな家(家族?)が存在している。だからオレ達の事などはほんの些細な事かもしれないが、オレにとってはこの姉妹の事はこの町で起こるどんな出来事よりも大事(だいじ)なのだ。
まあ、いつかこの学園の事を話すことも在るかも知れないが、今は家の姉妹の話をしたいと思う…
<6年前…>
「待ってよー、コウちゃん!!」
「マイは本当に走るの遅いよなー」
「そんな事ないよ!」「コウちゃんが速いんだよー」・・・バタ…
女の子は両手で花を持っていたので見事に転んでしまった。
「ふぇっ…」
男の子は慌てて女の子に駆け寄り、汚れた箇所をやさしく払うと
「血は出てないぞ、歩けるか?」
「うん…」
男の子は女の子の持っていた花を拾い集めて、片手を女の子に差し出した。
「マイのお母さん、きっと待ってるぞ」
「うん!」
2人は手を繋ぎ、山の上に見える神杜病院へと向かって行った。
<病院にて…>
神杜病院の一室、そこにマイの母は出産の為に入院していた。
体の状態が良くないらしく、予定日の二ヶ月も前から・・・すでに一ヶ月が過ぎていた。
「お母さん」
「あら、来てくれたのね。」「今日は光牙くんも一緒なのね、嬉しいわ!」
「今日は、お花を持ってきたんだけど…」
摘んできた花は転んでしまった時に傷つき、汚れてしまっていたのだが・・・
「あら、とても綺麗ね。どうしたの?」
「コウちゃんが咲いている所を教えてくれたの!」
「そう、ありがとうね。光牙くん」
ーと言うと、マイの母はオレをやさしく引き寄せて抱きしめてくれた。
「あー、お花を摘んできたのは私なのにー」
「お母さん、舞ちゃんにはその綺麗なお花を花瓶に入れてきて欲しいなー」
「うーっ…」「はーい」
マイは持ってきた花と花瓶を持って病室を出て行った。
「光牙くん、聞こえるかしら?」「赤ちゃんの心臓の音…」
トクン・・トクン・・・確かにマイのお母さんの鼓動以外にもかすかに、いやはっきりと聞こえる・・・
「うん、聞こえる」
「光牙くんもこうして生まれてきたのよ」
オレの母さんはオレが物心付く前に死んでしまっている。
だからオレの母親像はマイの母さんそのものなのだ優しく、温かい、そして良い匂いのする女の人・・・
「あーっ!まだ甘えてる!!」「コウちゃんもうダメー」「私のお母さんなんだからー」
「あら、私は光牙くんのお母さんでもあるのよねー。光牙くん」
ーと言いオレをさらに抱きしめてくれた。
「お母さんね、生まれてくる子は女の子のような気がするの」
「そうなら『愛』という名前にしたいと思うのだけど、舞はどう思う?」
「うーん?…ワカンナイ」
「良いんじゃない」「アイちゃんだろ、マイとアイなんて簡単で覚えるの楽だし」
オレはマイの母さんから離れると、恥ずかしさからこんな事を言ってしまった・・・
それでも、マイの母さんは微笑みながら・・・
「光牙くんは気に入ってくれたようね。」「舞は?」
「うーん…良いと思うけど?」
「そう、良かったわー」
「『愛』のお兄ちゃんとお姉ちゃんになって頂戴ね。」
・・・・・
「あっ、お父さん」
「あ、父さん」
オレとマイの父親が病室に入ってくる。
「あら、男二人で仲が良いわね(笑)」
「ああ」「オレ達2人は深い愛で繋がっているからな(笑)」
「おいおい、あんまり気持ちの悪い事、言うなよな(笑)」
オレとマイの父親は古くからの友人であり、更に家が近所になったという事も在り親密な家族となっていた。
<自宅にて…>
あの後、病院で看護婦さんに怒られたオレ達はすごすごと4人でオレの家に戻って来ていた。
オレの部屋で遊んでいたオレとマイはいつのまにか、眠ってしまったようで気が付くと2人でオレのベットに寝かされていた。
マイを起こさないように起きてトイレに行き、居間へと降りていくと父さんとおじさんの声が聞こえてきた。
「由香里さん、今日は具合が良さそうだったじゃないか」
「そうだな、このまま良い状態で居てくれれば良いのだけれどな」
「舞が生まれた時に、もう子供を生むのは難しいと言われていたのにあいつときたら『どうしても、この子だけは生みたいの』なんて泣きながら言い出すんだからなー」
「もう、ここまで来たら無事に生まれてくれる事を祈るしか無いものなー」「よし、赤ちゃんが無事に生まれることを信じて乾杯だ!!」
父さん達がグラスを合わせたのをきっかけに、電話が鳴り出した・・・
・・・・・
「はい。一条ですが…」
「えっ、はい、居ますが…」
・・・・
「はい。すぐに伺います。」
父さんは、受話器を置くと居間に戻りおじさんに・・・
「由香里さんの容態が急変したらしい、今から直ぐに病院に行こう」
「オレはタクシーを呼んでくる」
父さんはそう言うと電話機に戻っていった。・・・おじさんは暫くの間、動かないでいたがオレの姿を見ると・・・
「光牙くん、しばらく舞を頼む…」
ーとだけ言うと父さんの元へ走り出した。
・・・この騒ぎでマイも起きたようで、下に降りて来た。
「どうしたの?お父さん…」
「お母さんの容態が悪くなったみたいなんだ、お父さんお母さんの所に行って来るから光牙くんとおとなしくこの家で待っているんだ、いいね!」
「…うん、わかった」
タクシーが家の前に来たようで、2人は急いで乗り込んで行った。
・・・・
「…お母さん」
オレはマイにまったくなにも声を掛ける事が出来なかった・・・
<翌日…>
父さん達が家を出て行った後、オレとマイは一枚の毛布で身を寄せ合って朝になるまで包まっていた・・・。
オレは一人になりたく無かった。きっとマイも同じ気持ちだったと思う・・・。
マイと一緒に居れば、安心できた。マイのミルクのような甘い匂いと暖かな感触で・・・
でも、声を出してしまうとすべて壊れてしまいそうな気がして2人共言葉を交わす事は出来なかった。
・・・・・
朝になり、日の光が差し込むとマイが声を掛けてきた・・・
「コウちゃん…」
「何?…?」
マイの返事は無かったただ穏やかな吐息だけが聞こえてきた。
その吐息を感じながらオレも眠りに入っていった・・・
・・・・
お昼前頃、父さんが家に戻ってきた。気が付いたオレは居間に降りて行った。
父さんは居間に座り込んでいた・・・
「父さん…?」
「光牙か、舞ちゃんは?」
「上で寝てるよ…」
「そうか…。」「…光牙、…由香里さんが亡くなった。」
「えっ…?」
「…舞ちゃんを起こして来てくれないか」
「また、すぐに病院に行くから…」
「う…うん」
・・・・
オレは自分の部屋に戻り、眠っているマイを見つめた・・・
・・・どうしたら、良いのかオレには解からなかった。ただマイの涙は見たくないという思いだけだった・・・
「マイ、マイ起きろよ」
「あっ、コウちゃん…」
マイは朦朧とした目でしかし、しっかりとオレを見つめた。
「オレの父さんが帰ってきた…」
オレはそれだけ言うとマイの目線から外れた。
「う、うん…」
マイはそう答えると、ゆっくりと部屋を出て行った。
・・・・
そして、オレ達3人は病院へと向かった・・・。
<月日は流れて…>
毎年、家にはマイとアイの姿を写した年賀状が送られてくるのが、ここ数年恒例に成っていた。
そして、父さんは久々に家に帰って来ると、お気に入りの酒を片手にその年賀状を見るのも恒例と成っている・・・。
そして毎回、同じセリフを言い出す。
「愛ちゃん、大きくなったよなー」
「舞ちゃんはきれいに成ってきてー」・・・・
父さんは、毎年新しい年賀状が来ると(結構立派な)写真立てに入れ替えて居間に飾って居るのだ。
そして、古い年賀状は後生大事にコーテングして、出張先まで持っていく親バカ状態なのである。
そして、これまたいつものセリフ・・・
「それにしても健次の野郎、この年賀状以外は全くといって連絡、寄越しやがらねえ!」
「男の友情なんてのは、こんな物なのかね-…」
「まあ、便りが無いのは元気な証拠って昔から言うじゃん」
「だけどよー…」
「あーぁ、舞ちゃんと愛ちゃんに逢いたいよー!!」
「まったく…」「だったら、父さんから連絡すれば良いじゃないかー」
『それは、い・や・だ・!』
まったく、父さんもマイお父さんも変な所で似ていたからなー・・・
「でも、愛しい娘達に逢いたいぞ!お父さんは-!!」
おいおい、いつから娘に成ったんだよ(笑)
しかし、マイ達と別れてからもう5年も経つのかー・・・
父さんのお陰?で写真は毎日のように見ているが、本当に元気なのだろうか・・・?
オレは別れた日の事を思い出していた・・・・・
<アイ…>
由香里さんが亡くなって、半年ほど過ぎようとしていた頃にはアイも元気になり普通の赤ちゃんと同じように接する事が出来るようになっていた。
そして、アイが病院を出て来ると同時に北海道に引っ越す事になっていた。
マイのお父さん『健次』さんの肉親は今では実の兄である『健一』さんしか居ないらしく、その健一さんは北海道に奥さんと2人の子供と暮らしているらしいのだが、まだ乳飲み子であるアイの面倒を見て貰えそうな所はそこしかないらしいのだ。
・・・・
オレとマイはいつものようにアイの様子を見る為に神杜病院に来ていた。
初めて見た時は本当に『赤』ちゃん(赤くてサルみたいだった)だったアイも今では肌も白くなり髪も生えて、可愛い『赤ちゃん』になっていた。
今日はすでに保育器から出されて普通のベッドに寝かされている・・・。
「今日はちゃんと触れそうだぞ…」
「・・・・」「…そうだね」
「アイー、起きてるかー?」
アイはゆっくりと目を開けてオレの顔を見た。
「おー、ちゃんとオレの事を見てるぞー」
「だぁ」「だぁ」
アイは精一杯に手を伸ばしてきた。
オレも手を伸ばしてみると『わしッ』と指を掴かまれた・・・そして、その捕まえた手をブンブンと振り始める。
「きゃっ」「きゃっ」
アイは楽しそうに笑っていた。オレもつられて笑っていたようだった。
「・・・・」「やめてよ!ー」
マイはそう叫び、いきなりオレとアイの手を叩いた。
アイはびっくりして泣き出した。
「なにすんだよ!」
「・・・・・」「愛なんて居なければ良いのに…」
「愛なんて生まれなければ、お母さん死ななくても良かったのに…」
「コウちゃんも愛も嫌い、大嫌い!!」
マイは泣きながら、出て行った・・・。
オレの手には赤く叩かれた跡が付いていた・・・もちろん、アイの手にも…オレはアイの手を撫でた。
「ごめんなアイ」「痛かっただろ…」
しばらく撫でていると、アイは泣き止み目に涙を溜めながらオレに笑いかけてくれた・・・
「アイは良い子だな…」
アイはそのまま泣き疲れたのか静かに眠りについた・・・
「じゃあオレ、『お姉ちゃん』を捜して来るからな」
オレはアイにそう言って病院を出た。
<マイ…>
病院を出たオレは思い付く所を片っ端から捜した。でもそこにはマイの姿は無かった。
「マイ-!」「マイー!!」
どうしようもなくなり、叫んで見たがやはり返事は無かった。いつも良く行く所は全て行ってみた、あとマイと行った事のある所は遠く過ぎてお父さん達に言わなくてはとても行けない・・・
「まだ『あそこ』があった」
「…でも、この時期じゃ・・・」
ーと思いつつも、オレの足はその場所へと走り始めていた。
・・・・・
息を切らせ、辿り着いた場所・・・そこは半年前に由香里さんの為に花を摘んだ所だった。
今はもう花は無く、枯れた草があるだけの広場となっていた・・・。
「ここに来て居たんだ…」
「・・・・・」
「…コウちゃん」「お花、全部枯れちゃった…」「全部…」
オレは震えているマイの背中を抱きしめていた。
「マイ…」
マイの体は冷え切って、冷たかった・・・長い間この風景を見ていたのだろう…。
「マイ」「お花は今、土の中にいるんだ。『種』という『花』になっているんだ」
「全部、無くなってしまった訳じゃない!『種』という新しい『花』に引き継がれて行ったんだ…」
・・・・・
「コウちゃん…『私』も『愛』も新しいお花になれるかな…」
「大丈夫、きれいな花になるさ!『舞』も『愛』も凄く綺麗な花に…由香里さんのように…」
「コウちゃん…」・・・・・
マイは堰を切ったように泣き出した、一生分くらい泣いたのではないかと思えるくらいに・・・
・・・・・
辺りが暗くなってきた頃、ようやくマイは顔を上げた・・・
涙と鼻水でぐしょぐしょになっていたが、オレにはとても愛らしく感じられた。
オレは自分のシャツでマイの顔を無理矢理に拭くと・・・
「ひどーい!」「痛いじゃないー!!」
ーとか言ってるマイにキスをしていた。
「・・・」
マイは突然なキスにびっくりして何も言えないでいた。
「ほら、アイの所に戻ろう…」
オレは手を伸ばすとマイは素直に手を繋いできた。
「うん、愛に謝らないと…」
オレとマイは手を繋いだまま神杜病院へと駆け出していた。
<電話…>
そして、とうとう別れの時が来た・・・。
すでにマイの家は売られて引渡しも済んで、アイが退院するこの日までマイと健次さんはオレの家に泊まっていたのだ。
凄く楽しい数日だった。この数日、2人の父さん達はオレやマイと一緒に過ごしてくれていた、オレとマイがケンカした時なんかは2人で心配して挙句にケンカし始める・・・
結局、オレとマイが仲裁したり…とにかく楽しい日々だった。
「アイ、元気でな…」
「きゃっ」「きゃっ」
アイはオレが声を掛けると楽しそうに手を振ってくれた。
父さん達はすでに挨拶が済んでいるようでオレとアイとマイを見守っている・・・。
「マイ…」・・・・
・・・・ジリリリリン…ジリリリリン…
父さんの趣味で手に入れた黒電話が鳴り出した。
「もしもし」
「一条さんのお宅でしょうか?」
「私、香月舞と申しますが光一さんは御在宅でしょうか…?」
「!?」
「マイ?マイなのか!?」
「オレだよ、コウガだよ!!」
「コウちゃん?なの…?」
「ああ、そうだよコウガだよ。」
「コウちゃん…」「………」
・・・・
「おい、マイ?」「どうしたんだよ」
「・・・・・」
「おい、泣いてるのか!?」「おい!マイ!」
「…お父さんが…」
「おじさんがどうした?」
「…倒れて、入院して…」
「えっ、おじさんが…そう…-で、容態はどうなんだ?」
「今夜が峠って、お医者さんは言ってます…」
「解かった。今からすぐそっちに行く、どこの病院なんだ?」
「札幌中央病院…」
「札幌の市内に在るのか?」
「うん…、そう、すぐ解かると思う」
「解かった。父さんも今居るから一緒に向かう」
「マイ、携帯とか持ってるか?」
「ううん、持ってない」
「じゃあ、その病院の電話番号を教えてくれ!」
「うん、判った」
マイはオレと話している間に少しは元気になったのか、ハッキリと番号を伝えてきた。
オレはメモすると父さんの所に行き電話の内容を伝えた。
数時間後、オレと父さんは札幌の病院に着いた。
<病室…>
病室に入っていくとマイが一人で看病していた。
「マイ…」
「あっ…」
マイはオレの声に気付いて立ち上がり、こちらを見た…そして、ポロポロと涙を流した…
「舞ちゃん…健次の具合は?」
マイは涙を拭った。
「さっき、凄く暴れて…看護婦さん達と抑えて…」
マイは状況を伝えようと涙を堪えて必死に喋っていた。
「今は、鎮静剤が効いているみたいで…落ち着いています。」
「そんな状態だったのか…舞ちゃん、大変だったね。」
マイは父さんにそう言われると小さく頷いていた。
「マイ、一人なのか?」
「愛は健一叔父さんの家にいます…」「あの子に今のお父さんの姿は見せたく無いですから…」
「そ、そうだよな…」「倒れた原因は?」
「脳卒中だそうです。」「だいぶ出血が酷いらしくて…」
「・・・・・・」「健一さんは来て居ないのかい?」
「健一叔父さんは今、仕事で東京に行ってるらしくて、なるべく早く戻ると連絡が在りました。」
「そうか…」「健一さんの奥さんは?」
「えっ…」「…」「そ、それは…」
そう話をしていると、ベッドから声が聞こえてきた。
「なあ光一、ここは何処なんだ?」
「!?」
「健次!気が付いたのか?」
「ああ、病院か?ココは…」
「そうだ、お前が倒れたと聞いて飛んで来たんだぞ」
「そうかー、それは悪かったなー」「…」
「おい、由香里…」
『?』
「何をぼーとしてるんだ?」「舞は居ないのか?」
「おい、舞ちゃんならそこに…」
「由香里、舞はどうした?」
健次おじさんはマイを見て言っていた・・・。
「そういえば、光牙くんも居ないみたいだなー」「2人とも、光一の家なのか?」
「・・・・」
「ああ、舞ちゃんと光牙はオレの家に居るから安心しろ」
「そうか…じゃあ、安心だな…」
健次おじさんは記憶が後退しているようだった・・・。
父さんの事は判るようだったが、マイの事を由香里さんと思っているようだった。
「由香里さん、先生を呼んで来てくれないか?」
父さんはマイに向かって明るくそう言った。
そしてオレに小さな声で「お前も一緒に行け!」と言ってきた。
父さんは健次おじさんといつもと同じ様な感じで話を続けていた・・・。
オレとマイはナースステーションへと静かに移動した。
・・・・
病室には戻らずにオレはマイを連れてホールへと行った・・・。
<怒り…>
夜のホールにはオレ達以外の人影は無かった。
オレはマイを椅子に座らせると、自販機に行き温かいミルクティーと冷たいスポーツドリンクを買ってマイの所へと戻って行った。
「マイ、飲めよ」
「うん…」
マイは差し出されたミルクティーを受け取ると、手でコロコロと回していた・・・。
オレは無性に喉が渇き、殆ど一息で飲み干してしまっていた。
「コウちゃん、相変らず凄い飲み方(笑)」
「そ、そうか?」
「うん」「・・・・」
・・・・
「あのね、お父さん…本当は昨日も具合が悪そうだったの…」
「でも、無理して私達の為に遊びに連れて行ってくれたの…」
「…私と愛との約束だからって…」
「止めて置けばよかった!」「私、お父さん無理しているの解かっていたのに!!」
「…私が…」「私が…止めて居れば…」
マイは行き場所の無い、悲しみと自分への怒りで震えていた。
「…マイは悪くない」「オレがおじさんだったらきっと同じ事してる」
「でも…」
「マイは悪くない」
オレはマイの頭を抱きながら撫でた。
「マイは悪くない…」「悪くないんだ…」
マイは声を出さずに泣いていた…二度とマイの泣き顔は見たくなかった…。
・・・6年前と変わらない。…これじゃあ何も変わって無いじゃないか!
オレは自分の無力さに怒りすら感じていた・・・
・・・・
健次おじさんは、記憶の後退などの障害は見られたがいちおう峠は越えて取り合えず、命の心配は無くなった。
父さんの話に寄ると、約10年ほど記憶が後退しているらしく、健次おじさんの中では光牙は5・6才の子供のはずなので「お前は病室に入るな!」と言う事だった。
仕方なく病院の表のベンチでボーッとしていると家族らしき面々がタクシーから降りて来た。
「まったく冗談じゃ無いわよ!」「ただでさえ迷惑かけてくれてるのになによ今度は!まったく!!」
ーとお母さんらしき人物がわめき散らしていた。
「おいそんな事、言うなよ」「仮にもオレの弟なんだから…」
ーとお父さんらしき弱そうな人物がなだめている。
「まあ、好きで倒れたとは思わないけどー」「いい加減にして欲しいよねー」
ーと娘らしき人物がむかつく言い方で降りてくる。
「ホント、ホント」「迷惑ばっかりかけてくれる一家だよねー」
ーと息子らしきガキがゲーム片手に降りた。
「ママー、あたしとライムはこの辺に居るよ」「あんなオジサンの見舞いなんてしたくないしー」
「ママも早く戻ってね!デパート行くんだから」
「そうだよ、パパだけで行ってきなよー」
「モカちゃんもライムちゃんもわがまま言わないでねー」「ママも行きたくなんか無いけど大人には世間体とかいろいろあるのよ。解かってね!」
・・・・もか?とらいむー?どんな字書くんだよw
「わかったー早く戻って来てね!」
・・・・まったく…なんちゅー家族だwww
「ほら、行くわよ。早くしなさい!」
ーとババアが声を張り上げた。
「…お姉ちゃんがまだ来ちゃだめって言ってたの」
ーと小さな声が答えた・・・もう一人居たのか…
「いいのよ、早くしなさい!まったく口答えばっかりして!」
ーとババアは小さな女の子を引っ張り出した。
・・・・・
「…アイ!?」
その女の子は毎日のように見ていた写真の大きくなった『アイ』だった。
<決心…>
その小さな少女は、間違い無く『アイ』だった。
赤ちゃんの時に別れて、一度も会っていなかったが毎年の成長は知っている・・・。
オレが『アイ』を見間違えるはずなどありえなかった。
「いやー、行かない。お姉ちゃんが迎えに来るまで病院には来ないって、約束したもん!」
「いいって言ってんでしょ!まったくこの子は!!」
「いやー」
嫌がるアイを無理矢理、引きずるように引っ張っていた。
「いい加減にしなさい!!」
そう言い、手を上げたその時、アイは小さくなって震えていた。
「おい、もういいじゃないか。舞ちゃんを呼べば…」
たぶん、健一さんであろう人が言い出す。
「もう、勝手にしなさい!!」
そう、捨てセリフを言うとダンナを連れて病院の中へと入って行った。
オレは一瞬の出来事に何も出来ずに呆気に取られていた・・・。
「ホント、愛ってママの言うこと聞かないよなー」
「愛もそうだけど、舞のヤツも何考えてるか判んないしー」
「ホント、この姉妹は厄病神だって。ママが家から早く出て行って欲しいって言ってたよー」
「しかし、愛が生まれた理由(せい)でオバサン死んでー」
「今度は、オジサンが死にそうーかーホントに厄病神だねー」
「あはは・・・」
2人の姉弟は楽しそうに笑っていた。
アイは小さな体をさらに小さくして耳を塞いでいた。
「おい!そこのくそガキ共!!」
「人間、言って良い事と言ってはいけない事があるのも知らないのか!」
「……まあ、あの親じゃ仕方ないかも知れないけどな」
アイはオレのことに気付いて顔を上げた。
「な・なによ、あんた」「あかの他人がシャシャリ出て来ないで欲しいものね!」
「そーだ、そーだ。出てくるなー!」
「他人か…」
「アイはオレの妹だ!!」
・・・・
「…なっなに言ってるのよ!」「その子には姉しかいないわ!!」
「そーだぞ、いないぞー」
「はっ、お前らが知らないだけだろ…オレはアイの『お兄ちゃん』なんだよ」
「うそー!」「なに言ってんのこいつ…頭、おかしいんじゃないー?」
オレはアイの方へと行きしゃがみアイと目線を合わせた・・・
「アイ、ごめんな。助けに来るの遅くなっちゃって…」
「………?」「…もしかして、コウガお兄ちゃんなの?」
オレはアイがオレの事を知っているとは思っていなかった、ただアイを助けたい、守りたい、ただそれだけで・・・
「ああ、オレはコウガ。アイのお兄ちゃんだ…」
「……」「……おにいちゃん~」
アイはオレにしがみつくとわんわんと泣き出した。
オレはアイの頭を撫でながら、決心していた。
<決断…>
泣きじゃくるアイの頭を撫でているオレを呆気に取られて見ている姉弟・・・
そこに、マイがアイの事を心配したのだろう、急いで表に出てきた…そして泣いているアイの姿とオレを見付けると安心したように顔を和らげた・・・。
「ちょっと舞!」「なんなのコイツ!!」「いきなり出て来て『アイはオレの妹だ!』なんて言ってんのよ!」
「…コウちゃん…」
その事を聞いたマイは嬉しそうに瞳を輝かせた。
「舞!!」
「あっ、はい」「光牙さんは、お父さんの古くからの友人である光一さんの息子さんで…」
「やっぱり、兄妹なんかじゃ無いじゃない!」
「そーだ、そーだ!」
マイの話を断ち切ってバカ姉弟は言い出す。
「……」「…いいえ!光牙さんは愛のお兄ちゃんです!」
マイが大きな声ではっきりと言い放つとバカ姉弟はビックリしていた・・・。
「確かに私と光牙さんは兄妹では無いです…けど、光牙さんはアイのお兄ちゃんなんです…。」
マイの言葉を聞いたアイは瞳に涙をためながら満面の笑顔を見せていた。
そして、オレにしっかりと抱きついてくるのだった。
「……舞。あんた何、言ってんの」「あんたと兄妹じゃ無いなら、愛と兄妹なはず無いじゃないの!!」
しばらくして、冷静になったのかバカ姉が言い出してきた。
「…ああ、オレとアイは確かに血の繋がった兄妹じゃない…」
「だけど約束したんだ、オレはアイのお兄ちゃんになるって…」
オレはアイを抱きかかえて立ち上がる・・・
「そう…オレはアイを守る…いや、アイだけじゃない」
「アイもマイも守る!そう、その為にオレは今、ここにいるんだ!!」
「アイとマイは家で引き取る。もうあんた達家族には渡さない!」
マイはオレの言葉を聞いて、両方の目から一筋の涙を流していた。
「あははは・・・」「あんた何いってんの?」
「あんただって、どーみてもまだガキじゃない」「どーやって引き取る気ー?バッカじゃないの!!」
・・・・・・
「そうだな、お前にはまだそんな権限は無いな」
いつの間にか父さんが、ババアと一緒に降りてきていた。
「父さん…でも!」
「でもも、かんもあるか!」
「こういうことは、お前の勝手な判断で出来るものじゃない!」
父さんは強くオレに言い放つ・・・そして、優しげな顔に戻るとアイの頭を撫でながら
「ちゃんと段取りをふまないとな!」
ーと言ってマイにウインクなんかしている・・・。
「-という訳で、奥さん。」
「突然で申し訳ありませんが、愛ちゃんと舞ちゃんを私の家でお預かりさせて頂きます。」
父さんの落ち着いた言い回しでしかも有無を言わせない口ぶりにオレは思わず歓声を上げそうになったがなんとか堪えていた。
マイはもう歯止めが効かないらしくポロポロと涙を流していた。
それを見ていたアイは嬉しそうに、オレとマイと父さんを交互に見ていた。
「-ええ、もちろん舞ちゃんは健次が病院を移動出来る状態になるまではそちら様で『大切』にして頂きたいと思っています。」「詳細は健一さんとしっかりお話致しますので、奥さんは御心配なさらないで下さい。」
「……健次は私の大切な友人なんです。その娘である愛も舞も私には娘以上の存在なんですよ。」
「…それは、コイツも同じ…無礼な口をきいていましたが、お許し下さい!」
ーと言いながら、オレの頭をつかみ無理矢理下げると自分も頭を下げていた。
<笑顔…>
あの後、3人はなにかしら言っていたが、父さんに言い負かされて病院を出て行った。
そしてマイは病室に戻り、健次さんの看病をして父さんと健一さんは別室で話をしていた。
残されたオレとアイは病院内にある喫茶店のような所でアイと…いやアイの話を聞いていた。
まずは昨日、行ったラベンダーのお花畑がすごく綺麗だった事…
いろんなハーブがあって鼻がオカシクなっちゃった事…
ハチミツたっぷりのパンケーキを食べた事…
目を輝かせて楽しげに一生懸命にオレに説明してくれた、そして…「おにいちゃん、もう1日早く来てくれれば、一緒に行けたのにー」ーと本当に残念そうに言ってくれた。
・・・・
しばらくすると、父さんと健一さんが店の中へと入って来た。
そして、健一さんはオレ達3人に向かって頭を下げて「愛と舞をよろしくお願いします」と言ってくれた。
・・・・面会時間がもうすぐ終了となる頃、3人で病室へ行った。マイは健次さんの傍らで座っていた。
「どうだい?」
「あっ、はい。今、薬が効いて寝ています」
ーと小さな声で答える。それを聞いたオレとアイは静かに病室の中へと入った。
「お父さん…」
アイはおずおずと健次さんの近くに寄って、マイの横まで行くとマイの顔を見る…
マイはアイを抱きかかえて健次さんの顔を見せた。
「お姉ちゃん、お父さんのぐあい良くなった?」
「……」「うん、かなり良くなったよ」
「よかったー!」
ーとアイとマイが話していると、健次さんが目を開けた…
「舞、来たのか?」
「えっ、あっはい」
ーと答えると、マイはアイの手を取り振って見せた。
「そうか…」
健次さんはゆっくりと手を伸ばして来る…マイはアイを抱きながら椅子に座った…
健次さんはアイの頭をやさしく撫でていた。
アイは嬉しそうに笑顔を見せた、健次さんも笑顔で眠りについていった・・・
<隠し事…>
札幌中央病院は完全看護の病院なので、今夜はマイも病院から出る事となった。
父さんはホテルの部屋を替えて貰って、アイとマイも一緒の部屋に泊まれるように手配していた。
アイはホテルに付く頃には、『お父さん』の具合が良くなった事と、みんなでホテルに泊まれるという事でハシャギまくっていた。
マイはお姉さんというより、若いお母さんの様にアイの世話に追われていた。
「なーマイ。アイと一緒に風呂でも行ってこいよ」
「下着はココに来る途中で、買ってきたんだろ?」
「あっはい」「じゃあ、ここの部屋のお風呂をお借りします」
「えっなんで??」「確かここ、大きい風呂が在るって言ってたぞ」
「えっ…と私も愛もそういうお風呂には慣れていないから…」
「でも、せっかく在るんだからこんなユニットの風呂に入らんでも…」
「アイは喜ぶんじゃないのか?大きい風呂?いくら慣れて無くても…」
「いいんです!」「…私達はこちらで…」
「でもさー」
「いいんです!!」「光牙さんこそ大きいお風呂に行かれたら如何ですか?」
なんか変な感じがしたが、マイが怒って言っていたのでしぶしぶオレは大浴場に一人で行った。
結構立派な風呂だった。
「やっぱり、風呂が良いと気分が良いな…アイが喜びそうなのになー」
だいぶゆっくりと入っていたはずなのだが、部屋に戻ってみるとまだ二人は風呂に入っているようだった。
「父さんは…まだ戻ってないみたいだなー」「まだ仕事先に捕まってるのかなー?」
「まあ、いきなり『今日、休みます。今、北海道です…』じゃなー、しかも明日は大事な取引が有るとか無いとか言ってたしなー・・・」
・・・・
「愛、ダメでしょ。ちゃんと拭いて!」
「きゃっきゃっ」
アイはよほど楽しいのか裸のまま風呂から出て来てしまっていた。
追っかけて来ようとしたマイはオレが戻っているのに気付くと顔を赤らめて風呂に戻って行った・・・。
「……………胸、小さいな…マイ…」
オレは一瞬だったが、しっかりとマイの上半身を見てしまっていた。
アイは裸のまま走りまわっていたので、オレの持っていたタオルで捕まえた。アイはそれでも楽しそうにきゃっきゃと言っている…
「!?」
すぐには気付かなかったが、アイの体のあちこちに赤くなっていたり、青くなっている所が幾つもあった・・・
「こ、これは…?」
「コウちゃん…気が付いちゃった?」
マイはバスタオル一枚を付けた状態で立っていた。
よく見るとマイの両腕にも似たような青あざのようなものがある。
「…まさか、あのババア達なのか!!」
「もう、いいの!」「もう、良いから…」
マイはオレをアイごと抱きしめた・・・
「もういい…コウちゃんが…コウちゃんが迎えに来てくれた、それだけで…」
<約束…>
今、アイはベッドの中ですやすやと眠っている…
その傍らで、マイは優しくポンポンと布団を叩く…
「そういえば、由香里さんも同じ事してくれてたな…」
・・・・・
「ねぇ、コウちゃん…」
「…何?」
「あのね…」「……ありがとう来てくれて…」
「何、言ってんだよ。当たり前だろ」
「ううん…ありがとう。私と愛を迎えに来てくれて」
「私、愛がこんなに嬉しそうにしているのを見るのは初めてなの…」
「もちろん、お父さんと3人で居る時は楽しそうにしているけど…」
「今日の愛は本当に嬉しそう…」
「コウちゃん…私と別れた時の事、おぼえてる?」
「ああ、当たり前だろ…」
オレは忘れもしない、あの時の事を思い出していた…
・・・・・
「マイ…」「……元気でな」
「うん…」
「アイと仲良くしろよ」
「うん…」
「……」「…………」
「…コウちゃん?」
「…早く戻って来いよ!」
「う、うん」
「いつまでも、戻って来ない時にはオレが迎えに行くからな!」
「うん!」
「じゃあな!」
「うん、じゃあね!」
・・・・
そうオレはマイと約束をしていた。『オレが迎えに行くと…』そしてマイはそれを信じていてくれた…
「あのね、前に一度だけ愛がどうしても泣き止んでくれなくて…コウちゃんの事を教えたの…」
「愛には、コウガっていうお兄ちゃんが居て私達のお母さんが眠っている神杜町っていう所で私達を待ってくれてるの…って」
「そして…いつまでも私達がもどれなかったら…コウガお兄ちゃんが私達を迎えに来てくれるから、それまで良い子にして居てね…って…」
「それから、愛はあまり泣かなくなってくれたかな?」
「その代わりに…」
『おにいちゃん、いつ来てくれるのかなー』
『おにいちゃん、まだ来ないの?』
『おにいちゃん、愛のこと嫌いになっちゃったの?』
『おにいちゃんってどんな人??』
「-って言って…凄く大変だったんだからー」「しかもお父さんや他の人にはコウガお兄ちゃんの話をしないように言い聞かせるの凄く大変だったんだからー」
「…そっかー、だからオレの事を知ってたんだー」
「でもアイの『理想のお兄ちゃん』にはほど遠そうだな、オレ」
「……そんなこと、無いよ」
「愛の顔を見れば判る。コウちゃんは愛の思っていた通りのお兄ちゃんだよ」
「コウちゃん…愛を宜しくお願いします…」
「…ああ、頑張るよ。アイが笑顔でいられるように」
・・・・・
「よし!頼んだぞ、おにいちゃん!!」
「なんだ、それ?」
「えー、私が『おにいちゃん』って言うの変?」
「…うーん、なんか…」
「やっぱり、『コウちゃん』?」
「いや、それは2人の時なら良いけど…他の人の前ではどうかと…」
「えー、じゃあ『コウガ様』?『御主人様』?(笑)」
「それは、ありえないだろ(笑)」
・・・・・
「なんだ、ずいぶん楽しそうじゃないか」
父さんが戻ってきた。すでに10時を過ぎていた…
<朝…>
オレはやる事が無く、ただボーッとテレビを見ていた…
「うにゅーん」
…不思議な声がした……アイが目を覚ましたようだった。
アイは自分の状況が判断出来ないのか、キョロキョロしている。
オレはアイの側に行った。
「あ、……」
アイは何か言いたそうに、シーツを持ってモジモジしていた。
「どうした?アイ」
「あ、あのね…」
「うん?」
「…おはよう……おにいちゃん…」
アイはとても小さな声でそう言ってきた。
「はい。おはよう!アイ」
オレがそう言うとアイは表情を明るくしたそして…
「おにいちゃん!おはよう!!」
今度は大きな声で挨拶すると、そのままオレに抱き付いてすりすりしてくるのだった。
「…ねえ、お姉ちゃんは?」
「ん、マイか?」「マイは健次さ…『お父さん』の所に行ってるよ」
「一人で行っちゃったの?」
「いや、オレの父さんと一緒に行ったよ」
「そうなんだー」「…私は『お父さん』の所に行っちゃダメなのかなー?」
「うーん…やっぱり、『お父さん』の所に行きたいよね」
「…うんと、お姉ちゃんがダメって言うなら私、行かないよ」
「………おにいちゃんも、行っちゃう?」
「オレは、アイと一緒に居るよ。出掛ける時も一緒だよ」
「…おにいちゃーん」
また、抱き付いて来る…今度はさっきよりもだいぶ長い間すりすりしていた。
・・・・
昨夜、父さんが戻って来たのは10時を過ぎた頃だった。
「愛ちゃんは、やっぱりもう眠っちゃってるかー…」
父さんはアイの側に行き寝顔を確認すると、柔らかい髪をやさしく撫でていた。
「舞ちゃん、悪かったね。遅くなっちゃって、本当は愛ちゃんを含めてみんなでちゃんと話をしようと思っていたのだけれど…」
「え…いいえ」「あっ今、愛を起こしますので…」
「あっいいよ」「起こさないで、寝かせてあげよう…」
「でも…」
「いい、いい!」「愛ちゃんには明日、光牙が説明すれば良いだけの話だ」
父さんの話では、明日どうしても一旦仕事に戻らない訳に逝かなくなったらしく明日のAM9時頃の飛行機で戻る事にしたらしい。
そこで、朝早くマイと一緒に健次さんの状態を見に行ってその足で空港に行く事に決めた。
そして、明後日の朝か遅くても昼までには、このホテルに戻って来て、アイを連れて神杜に戻るつもりだと言っていた。
マイはその意見に同意した。
よってオレはそれまでにアイの身支度をして置くようにつまり明日(今日)の内にあの家に行ってアイの身支度をしなくては成らないのだ…
…そして、一番重要な事をアイに伝えなくてはいけないのだ…そうマイとしばらくの間、離れて暮さないといけないと言う事を…
<説明…>
「アイ、大事な話があるんだ…」
オレがそう言うと、抱き付いていたアイはオレから離れてちょこんとベッドの上に座った。
オレは横にあるベッドにアイと対座するように座った。
「アイ、あのな…」
オレはなるべく判り易いであろう言葉を選んで話していたつもりだったが、最後の方は自分でも良く判らなくなってシドロモドロに成っていた…。
「…おにいちゃん、良いかな?」
「えっ…うん」
「つまり私は、明日おにいちゃんといっしょに『かみもり』っていう所に行けるように今日の内に『あの家』に行って必要な物をとってくれば良いんだよね」
「うん、そう…」
「それで、お姉ちゃんは『お父さん』のかんびょうがあるからすぐには行けないってことなんだよね」
「そう…そうなんだマイとしばらくの間、離れなくちゃいけないんだよ」
「うん、わかったよ」「…でも、おにいちゃんは私といっしょにいてくれるんだよね?」「私、おにいちゃんがいてくれればだいじょうぶだよ」
「………」
オレは何を一人で心配していたのだろう…
そういえば昨日、マイも父さんもまったく心配していなかったような気がする…
オレがその事はマイが話した方が良くないか?-と言っても
「光牙さんは、愛にとってはお兄ちゃん所か白馬の王子様みたいな存在なんだから私の言う事より聞いてくれると思うけど?」
「おい、お前はお兄ちゃんになるんだぞ。その位、自分の言葉で伝えろ!」
その時は、二人とも気楽に言ってやがるなーと思っていたが…いらぬ心配をしていたのはオレの方だったらしい…
「…おにいちゃん?」
「…アイは頭が良いな」
オレはアイの頭を撫でた。アイは嬉しそうにはにかんでいた。
『グッウ~』と緊張から開放されたせいかオレの腹が盛大になった。
そういえば、朝食の時間はとっくに過ぎていた。
「アイ、朝ごはんを食べに行こう!」
「うん!」
オレはアイの手を取ってホテルの食堂へと向かった。